金融翻訳者の日記

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

前代未聞の和英翻訳(正式な翻訳文の後に直訳も別料金で受けて納品した話)(2015年9月)

昨日の朝、某ソースクライアントから連絡。

CSRについてコンセプトをとりまとめたので、その宣言文だけ(70文字)を英訳してほしい。今日中に」

が依頼内容。1万円(プラス消費税)を伝え、その文章だけでなく全体も送ってほしいと先方に依頼。2時間後にブレスト用資料を送ってくれた。宣言文はそのコンセプのまとめであった。

3時間後にネイティブ担当者からスッキリした英語が送られてくる。原文を解析した上で、

「この内容を(日本文では抽象的な表現になっている部分を)英語に合う、具体的な言い方に変えてこちらの英訳を作りました。長すぎても冗長気味になりインパクトが薄れますし、また英語らしいリズムも考える必要がありますので、逐語訳にはなりませんが、クールでシンプルな英訳になっていると思います」
と、普段なら私が書くべき解説文までつけてくれた。英語も17ワードにスッキリまとまっている。私からの質問なし。「完璧だ」と思って納品した。

2時間後にお客様からメールを見て唖然とした。

「・・・頂いた英文はネイティブ向けの具体的な表現になっているかと思いますが、ご参考までに逐語訳の場合の英訳も頂けないか」

即電話する。
「逐語にするのは簡単ですが、それがお望みだったんですか?」
「・・・いえ、担当部署の皆さんがあまり英語がわからないので、もう少しかみ砕いてくれないかとの要望があり・・・」

実は担当者(英語わかる人。弊社とのつきあいも3年以上あるのでこちらの言いたいことも分かってくれる)も他の部署との狭間で困っているらしい。

「わかりました。ではあくまでもご参考までにネイティブ担当者に逐語で英語に訳させます・・・ただし、いったん納品した完成品とは別の参考資料を作れ、とのご指示なので、恐縮ですが半額の5000円を追加で請求させていただきたく・・・」「了解しました」

ネイティブ担当者に電話して事情を話し「・・・という英語をお願いします。追加の報酬は2500円(つまり僕がもらう分の半分)」「了解」。
で今朝英語が届き、今度は私が次のメッセージを添えて納品した。

(以下引用)
私どもが考える直訳の問題点は以下の通りです:
① 本語の考え方を英語でそのまま表現しても、自然な英語にはなりません。(着物に素足で靴を履くような不自然さがあります)
② 似たような言葉の重複が多く、英語のリズムが壊れています。
③ 日本人が書いた英語であることが明確なほど不自然です(上記の英文は、いただいた原文を英語の得意な日本人が逐語で訳し、ネイティブ・チェックにかけた英文です)。
④ こういう宣言文を作成する場合は、基本は日本語で考えるにしても(だからこそいただいた補足資料は重要です)、メッセージを理解した後は日本語の表現から一旦離れて、企業の広告らしい洗練された英文を構築する必要があります。
(引用終わり)

いやはやこういう注文は初めてだ。ただしこれも多くの日本企業の現実ではないだろうか。コツコツ説明を続けて行くしかない。