金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

見た瞬間に分かる「不慣れ」

明日(25日)がほとんど稼働できないことがわかっているので、昨日と本日はソースクライアント2社からの仕事と書籍に邁進するつもりが、某翻訳会社からQAを頼まれていたことを思い出す。想定時間は2.9時間。始めてすぐにこの翻訳者valuationを「値ごろ感」overvalueを「オーバーバリュー」correctionを「手直し」と訳しframeworkを「ワク組み」と表記しているのを見て驚愕する。画面を見て「じぇじぇじぇじぇじぇ!」と叫び、今なら「てっ!」というのかなあ、まだなじめんなーと余計なことまで考えてしまう。ちなみに我々の世界(金融)では前から順に「バリュエーション(または株価評価)」、「割高」「調整」、最後が「枠組み」または「フレームワーク」とするのが大半、つまり常識です(もちろんこれが基本であって文脈によって様々なバリュエーション、例外はありますぞ)。訳したご本人は一生懸命に考えて意訳したつもりかもしれないが、完全に「外れ」。

あとは推して知るべしであろう。

翻訳の基礎はできているので「てにをは」をあまり直す必要はないのだが金融関連の文書を訳したことはないのが明らかで、用語がいい加減なのと、用語の意味を分かっていないので論理破綻した表現になっていることを直さなければならず、それに何より「意味がわかっていない」=書き手の力点(メッセージ)が読めていないのでボーッとした表現になってしまっている箇所が目立つ。原文の誤りに気づかない・・・と結局6割ぐらい訳し直したと思う。

2時間たったところで翻訳会社にメールを打ち「まだ半分しか来ていない。予算だとあと50分だけどどうする?」と送ったら「時間かけてやってくれてかまわん」とのお達しで結局5時間近くかかってしまう。つまり午前9時ぐらいに終わるはずの仕事がお昼までかかったわけだ。

この会社、評価欄があるので、「この翻訳者はこの手の文書を訳すのには適さない」と書きました。修正記録は全部残しているので本人もこれが戻ればわかると思う。だってこれじゃQAの方にコストがかかってしまうもの。もちろん「他の分野かもっと一般的な文書の翻訳なら悪くないかも」という言葉を添えて。

・・・というわけで予定より半日遅れてしまう。さらに夜になってソースクライアントから追加の依頼。すぐ電話してこちらの事情を話し、納期を延ばしてもらいました。