金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

金融翻訳

ドラギさんと言えば・・・

13日にイタリアでドラギ首相が誕生した。マリオ・ドラギ氏は、昨年まで欧州中央銀行(ECB)の前議長を務めていた方。そこで、ドラギ氏が在任中の有名な発言について、日本会議通訳者協会に寄稿したものを紹介します。 www.japan-interpreters.org

翻訳教室、翻訳講座、翻訳学校

翻訳教室、翻訳講座、翻訳学校に限っては明らかなことが一つある。それは、あなたがそれを受講しても通っても、あなたの実力、収入、紹介、就職は何も保証されない、ということだ。これは断言できる。 だから、その講座に申し込もうと思っているあなた、「自…

チームで翻訳/校正というプロジェクトから学んだこと(2021年1月)

A、B、C, Dさんの翻訳を僕が校閲し、Eさんの翻訳をBさんが、そしてFさんの翻訳をCさんが校閲し、最後にA~Fの校閲済み翻訳の最終チェックを僕がやる、というチーム制の翻訳プロジェクトがスタートして4年目に入った。 分野は金融。A~Fさんともかなりの経験…

新型コロナ危機は「ブラック・スワン」か?

新型コロナウイルス勃発後ほぼ1年ということで、会議通訳者協会向けに「ブラック・スワン」に関する考察をまとめました。 「COVID-19はブラック・スワンではなかった」というのが専門家の常識のようです。何らかのご参考になれば幸いです。 www.japan-inter…

「当社のホームページを英訳して下さい」:ホームページ翻訳(和文英訳)から見えてくるもの③)(2020年11月)

「当社のホームページを英訳して下さい」 と依頼してくるお客様に抜けがちな視点が二つある。 ①英訳する英文のほとんどは「翻訳」としてではなく、英米人の読者向けの会社のメッセージだという点。したがって、内容によっては「英文の元となる日本語」の修正…

ホームページ翻訳(和文英訳)から見えてくるもの②:誰のための英文?

現在、某サービス会社(A社)のホームページ/パンフレット/取扱説明書/利用規約等の和文英訳をほぼ全面的に請け負っている(最初にコンタクトいただいてから2年ほどになる)。 今、サービスの利用規約の英文をチェックしているのだが、それでつくづく思う…

実務翻訳(産業翻訳)サービスのあり得べき姿(2020年11月)

実務翻訳って、翻訳を切り口にお客様の文書全般に適切なアドバイスを提供するサービスだとつくづく思う。そのことを自覚している翻訳者はいったいどれだけいるだろうか。

「オンライン授業で講師をやって気がついたこと」

「2020通訳翻訳フォーラム」で講師をやらせてもらって気がついたことを記録のために書いておく。それは、「オンライン授業の場合、講師側には生徒の代表としてのモデレーターが必要ではないか」ということだ。 私は時たま何か話をしてくれと頼まれると①資料…

金融翻訳者にとっての日経電子版

今、昨日のNY市場関連レポート(昨日急落して、ナスダック総合指数は「調整局面」入りした)の翻訳をしながらつくづく思うのは、やはり日経電子版は、金融市場周りの翻訳者には必須ということだ(僕は別に日経の回し者ではありません)。 検索、特に期間を…

ここまでの「チャーリーの金融英語」(第1回~5回まで)(2020年9月)

日本会議通訳者協会からご依頼を受けてこれまでに書いた連載内容は以下の通りです。 【第1回】チャーリーの金融英語「MMT(Modern Monetary Theory)をどう訳す?」(2019年5月15日)https://www.japan-interpreters.org/news/suzuki-finance1/【第2回】チャ…

「日本通訳翻訳フォーラム2020」ー「コロナショックと金融翻訳」について

8月30日(日)に「日本通訳翻訳フォーラム2020」の講師を務めさせていただきました タイトル:「コロナショックと金融翻訳」 【セミナー概要】はじめに 「コロナショック」を定量的に見る「コロナショック」を定性的に見る「コロナショック」の報道を追う 20…

「失われた30年」

今日ですら、多くの人々は過去30年(まもなく35年か40年になろうとしている)の「惨めな時代」がいずれは悪夢のように終わり、そして物事は以前のような状態に戻ると信じている。(『21世紀の資本』トマ・ピケティ著、山形浩生他訳(みすず書房)p102) 引…

「『スラック』から考える失業率 (その3)」―働いていない人々をすべて含めて考える:リッチモンド連銀のHornstein-Kudlyak-Lange非雇用指数NEI

日本会議通訳者協会のマイク関根さん(先日『通訳というおしごと』(https://www.amazon.co.jp/dp/4757433972/ref=tmm_hrd_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=)を出されました)にそそのかされて(?)昨年春から、本業(金融翻訳)で出会いそうな、でも深く…

下訳について②

「下訳使うなんて信じられない」 (柴田元幸著『僕は翻訳についてこう考えています 柴田元幸の意見100』アルク社、p130) これは結構有名な発言で、その後に「何で他人に自分に代わって遊んでもらわなきゃいけないのか」と続く。村上春樹さんも同じだと。こ…

悪い英語ホームページの見分け方(2019年11月)

Google検索で "Reiwa"、"Heisei" ”top message"と打って出てくる会社は、英語版ホームページの意味がわかっていないと断言できます」とある経営者向け勉強会で話したらバカ受けした。 社長さんが「平成から令和という新しい時代を迎え」と言うのはいい。それ…

翻訳業務もティール組織化できそう

僕はあくまでもフリーランス翻訳者で、ティール組織の語る「組織のあり方」が自分の業務に直接関わることはないだろうと思っていたのだが、今回Teal Journey Campusに参加して、一見「個人作業」に見える翻訳業務(ここでは一応実務翻訳を念頭に置いている)…

MMT(Modern Monetary Theory)をどう訳す?(再掲)

日本会議通訳者協会の関根マイクさんから「金融翻訳に関する記事を何か連載してくれません?」との要請を受けて2年。「時間ができたら是非!」と言いつつずっと引き延ばしていたら、律儀な関根さんは半年に一度ぐらいずつ、「兄貴ぃ(僕の方が年上)、そろそ…

MMT(Modern Monetary Theory)をどう訳す?

日本会議通訳者協会の関根マイクさんから「金融翻訳に関する記事を何か連載してくれません?」との要請を受けて2年。「時間ができたら是非!」と言いつつずっと引き延ばしていたら、律儀な関根さんは半年に一度ぐらいずつ、「兄貴(僕の方が年上)、そろそろ…

メッセージを見つけるには、『考え抜く』しかない。すると、ある時啓示がある(野口悠紀雄さん):5月19日に出会った言葉

(1)2019年5月18日 ·「着想は長い夜に差し込む一条の光にすぎないが、この光こそがすべてである」ボアンカレ(『良き社会のための経済学』p87) 「メッセージを見つけるには、『考え抜く』しかない。すると、ある時啓示がある」(『超文章法』野口悠紀雄著…

緊張 vs リラックス(2018年12月)

実務翻訳は色々な意味で、まずは「緊張」の要素が強いのだけれど、書籍翻訳は、緊張よりも「リラックス」が先にないとうまくいかない気がする。

『英語原典で読む経済学史』(2018年11月)

根井 雅弘 著『英語原典で読む経済学史』(白水社)は面白い。 ①現代経済思想史の専門家が書いている。②大学受験英語で得たはずの知識や考え方を生かせないかという問題意識が根底にある。③訳す時の基本は、英米人の頭の中の流れに沿って、なるべく日本語と…

翻訳の添削業(?)ー複数の翻訳者によるマンスリー・プロジェクトの現場から(2018年6月)

「鈴木さん、翻訳の添削やったら?」と、ある方からアドバイスされた。 毎月某社レポートの校閲(まとめ役)を担当している。 複数の翻訳者の方の誤訳やら訳抜け、数字間違い等を随時直していく(優秀な方々なのであまりありません)のだが、普通の校正とち…

飜訳会社の延長線上にソースクライアントはいない(2021年4月)

昨日電話で話したある翻訳志望者の方は「翻訳会社とのつながりを広げ、深めていくとその先にソースクライアントがある」という誤解をされていたがそれはあり得ない。ソースクライアントは、自分で開拓、つまり営業活動をしないとという話をした。 飜訳会社を…

文芸翻訳の難しさ

今この瞬間に僕が訳している経済(市場)レポートについて、僕は歴史的背景も世界情勢もちゃんと分かって、その中の一部としてこの文章も表現も捉えられている。 したがって文章を読めばそこで言いたいことをほぼ正確に分かるし、かつ表現の機微も読みとった…

「機械(ソフトウエア)ができることは機械にさせた」利益は顧客に還元しなくてよいのか?(2018年3月3日)

「機械(ソフトウエア)にできることは機械にさせる」という考え方には僕も反対しない。「てにをは」や誤字脱字のチェック、同じ用語を使わなければならないところにその用語を使う。長い単語の打ち込みを省略する、等々だ。 もちろんそれを機械にさせること…

いわゆる「チェッカー」をやって気がついたこと(2018年1月)

A、B、C, Dさんの翻訳を僕が校閲し、Eさんの翻訳をBさんが、そしてFさんの翻訳をCさんが校閲し、最後にA~Fの校閲済み翻訳の最終チェックを僕がやる、というちょっとあまりない経験をした(僕は翻訳をしていない)。 分野は金融。A~Fさんともかなりの経験を…

原文を聞いて訳文をチェックする(2018年1月)

先日ある翻訳者の方とメールでやりとりしていて、僕が音声を使って翻訳チェックをしているのを勘違いされて「私も鈴木さんにならって日本語を聞いてチェックしている」と書かれていたので誤解に気がついた。 僕は、英語(つまり原文)の音声を聞いて日本語の…

時差ボケ(?)(2017年12月)

今朝気分がいいから髭剃りを当てながら「時をかける少女」の主題歌を鼻歌で歌ってたら、「ウルサい!今何時だと思ってんの!!まだ4時半よ!!!」と怒鳴られ我に返った自分(恥) (後記)今は起きるのが1時間ぐらい遅くなりました。(2021年12月27日)

仮想通貨に関するメモ(2017年11月)

最近、ビットコインに代表される仮想通貨についての新聞報道等がやかましくなってきました。 現段階では・・・ 供給が統制されておらず、とりわけ種類が無尽蔵に増えているので需要が引っ込むと必ず暴落する、という話は良く出ています。つまり仮想通貨は今…

訳文から見える違和感(2017年11月)

最近、必要があって同じ原文(マクロ経済の関するレポート)に対するいくつかの訳文を読む機会があった。審査というと偉そうだが、ちょっと見てくれません?と頼まれたわけです。 原文は読めている・・・と言っても私が普段訳している英文の地の部分はTOEIC…