金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

『新訂・英文解釈考』を学び始めて

「そうした語学的「予測(anticipation)」能力と感性的「受信(reception)」能力を育てるという二つの目標の踏み石となりたい本書の中の文章はできるだけ濃(こく)のあるものにしようと、平凡なことを平凡にしか言っていないものは気前よく捨てた」
(佐々木高政著『新訂・英文解釈考』(金子書房)はしがきiiiより)

筆者によれば、ここで「予測」能力とは、読んでいて次に来るべき言葉がある程度分かるようになること。内容について予断を持つということではなく、語学的に、という意味。「受信」能力とは、文章の言葉遣いから、書き手がどんな意図、どのような感情を込めて書いているのかがピンとわかる能力と解説しています。本を開くと分かりますが、各章の冒頭の1パラグラフ、その後の例文のいずれをとっても、嫌みのない教訓がちりばめられている。

原仙作さん(『英文標準問題精講』著者)に似た文章構造の解析はあるものの、原さんほど精密ではなくやや粗っぽい。章立ても伊藤和夫さんほど体系的でないのは時代の制約か、と思っていたのだが、この「はしがき」を読んで、本書の主眼はそこにないような気がした。従って英語の初学者(大学受験生)には厳しいかも(不親切に響くから)。

むしろ僕らのように受験の制約のない英語好きが、構文解析で英文の形を確認して、内容を味わうには最適な本ではないか、という気が強くする。「本書は英文解釈の参考書である以上に最高の教養書」という評価をどこかで読んだことを思い出しました。

復刻してくれた金子書房さんに感謝します。

『新訂・英文解釈考』を学び始めて②(翻訳ストレッチの教材から) - 金融翻訳者の日記

えもいわれぬ味(翻訳ストレッチの教材『英文解釈考』から) - 金融翻訳者の日記

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