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金融翻訳者の日記

自営業者として独立して10数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

『Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法』訳者あとがき

『Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法』

ウォーレン・バーガー著、鈴木立哉訳(ダイヤモンド社

内容をご理解いただくため、訳者あとがきを再掲する。

(以下引用)

本書はウォーレン・バーガー(Warren Berger)著A More Beautiful Question: The Power of Inquiry to Spark Breakthrough Ideasの邦訳である。著者はデザイン思考、イノベーションを得意とするジャーナリスト。本書執筆のために世界中のトップイノベーター、起業家、クリエイティブ・シンカーらを対象に、彼らがどのように疑問を抱き、独創的なアイデアをつかんできたかについて取材を重ねつつ、ブログA More Beautiful Questionを立ち上げ、読者との対話を重ねながら本書を完成させたという。

出版直後にIDEO社長兼CEOティム・ブラウン氏から「クリエイティブなリーダーが読むべき5冊の本」に取り上げられたことを手始めに、タイム誌、フォーブス誌、ニューヨークタイムズ紙、ハフィントン・ポスト紙など全米各紙誌で絶賛され、世界の革新的・創造的なビジネスリーダー、企業に圧倒的な影響を与え続けている。

原題を直訳すれば「より美しい質問:突破力のある思考に火をつける探求力」ということになる。日本では「質問力」あるいは「問う力」というと、「人」を対象にして「相手から何かを引き出す力」、という印象を持たれやすい。

ところが本書で「質問」や「疑問」、「問い」と訳している英語の「クエスチョン(question)」の意味はこれよりもはるかに広い。目の前に起きているありとあらゆる現象(人も含む)に対して「なぜ?」「もし~だったら?」「どうすれば?」と問い続けていく姿勢のことを指しているのだ。そして「イノベーションを起こすための鍵は『答え』ではなく『クエスチョン=質問/疑問/問い』の方にある」と断言する。

本書のキーフレーズ「なぜ?」「もし~だったら?」「どうすれば?」とは、言い換えれば、理由を探り、仮説を立て、方法を考えることだ。しかし著者はそんな堅苦しい論理学用語(?)を使わない。もっと気軽な乗りで素直に「なぜ?」と尋ね、何の条件もつけずに「もし~だったら?」と問い、「どうすれば?」と考えることが大事だという。一言で言えば、本書を貫くもう一つのキーワード「子ども」の目を持て、と言っているのだ。

本書では「子ども」、それも4歳ぐらいまでの好奇心旺盛な子どもたちがイノベーションの観点からいかに優れた質問をするのかが至るところに紹介されている。小さな子どもの素朴な質問に窮してしまう大人の話(第2章)、ハーバードの学生が幼稚園児に負けた話(第3章)、娘の「どうして?」との質問がきっかけでインスタントカメラの発明に結びついた話(第3章)などなどエピソードが満載だ。

にもかかわらず、と筆者は嘆く。4歳までにあれほど活発に「なぜ?」「なぜ?」を繰り返していた子どもたちは6歳になるころには口を閉ざすようになり、学校に入り学年が進むうちに先生や親から「先生だけが知っている正しい答え」を出し、それを「覚える」ことを半ば強制され、授業の進行を妨げるような質問はできない雰囲気の中ですごすうちに、本来持っていた「とうして?」の気持ちをなくして静かになっていく(しかも、筆者が取り上げているのはアメリカの学校なのだということをお忘れなく!)。そうして大人になったエリートたちが大企業に入り、出世競争に打ち勝ち経営者になった今、新興企業にあっさり敗れてしまう理由を、クリステンセン教授のコメントを引きながら指摘する。「大企業の経営者たちは『問う力』を鍛えられていなかったのだ」と(第4章)。

以上のように、本書は質問の重要性に始まり(第1章)、持つべき基本的な視点と背景(第2章)、ビジネス上での質問の方法や技術や訓練の仕方(第3~4章)、そして人生における「美しい質問」とのつきあい方や心構え(第5章)までを論じた、おそらく世界初の「質問教科書」ではないだろうか。「自分が子どものような気分になって考えてみよう」「『ブレーン・ストーミング』ならぬ『クエスチョン・ストーミング』をやってみよう」「『ミッション・ステートメント』ではなく『ミッション・クエスチョン』をつくってみよう」など、読者がその気になれば今すぐにでも始められる具体的な実践方法も紹介されている本書を読めば、あなたも今日からイノベーターへの一歩を踏み出せること請け合いである。

最後にお礼を。まず、素晴らしい原書をご紹介いただいた株式会社ニューズピックスの常盤亜由子さん、文字通りの拙訳に適確なコメントと励ましをいただいたばかりか、実務翻訳の仕事に追われなかなか原稿が上がらなかった私を辛抱強くお待ちいただいたダイヤモンド社編集部の三浦 岳さん、そして私の健康に気を遣いながら日々の生活を支え続けてくれた妻 暁子に心から感謝したい。ありがとうございました。

 

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