金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「あら、ばれちゃった?」(2018年1月)

以下は実にくだらないお話しなので、忙しい方は読んではいけない。
このオレ様が必死に仕事をしていると部屋の後ろのドアが開いた。

「お父さん、大変なことに気がついちゃったの・・・」

いかにも不機嫌そうな声で振り返らずに答える私である。

「な、なんだ・・・」
「お豆腐を買ってくるのを忘れちゃったのよ」
「あ~そうですか」
「時間・・・ないよね?」
「そ、それは、この僕に『買ってこい』っていう意味だね?」
「あら、ばれちゃった?」

こういう時はわざとボケる相方である。

「・・・わ、わかったよ・・・で、風呂は誰かがやってくれるんだろうな?」

風呂笑い、いや風呂洗いは、トイレ掃除、ゴミ出し、卵焼き焼き係、そして最近加わった夕食後の皿洗いと並ぶ私の「5大家事」の一つなのだ。

「も、もちろんよ。Hにやらせるわ」「よし」
「それとね・・・」
(え、まだある?)
「お買い物行ってくれたら、さっきリサイクルで売れたヘッドホン代金の1500円をお父さんにあげる」
「ヨッシャー、では行ってきます!!」「ありがとー」

1500円で簡単に転んだオレ様であった。

では行ってきます。

書店に置いてもらった本、置かれるようになった本(2018年1月)

以下は、つい2時間ほど前の、今晩の夕食時の会話である。

「ほい、これが見本。おじいちゃんの仏壇にお供えしよう」
「わ~、スゴいわねーお父さん、表紙がきれいじゃない!」「だろ?」
「しかもとても厚いのね・・・」
「ま、まあな。なんたってお前、2年半だぞ、2年半」
「頑張ったね、お父さん。で・・・『ティール組織』どういう本なの?」
「組織論だよ。あのさ、『世界でいちばん大切にしたい会社』ってあったろ、あの発展版でさ・・・(ああでもない、こうでもない)・・・」
「何か、難しそうねえ・・・ねえねえ、それって文教堂西葛西店に置いてありそうな本?」
「う、それはいい質問かも・・・」
「やっぱり丸善オアゾ店クラス?」
「う~ん、そうだなあ。ビジネスマン向けだからなあ」
「でもお父さんの『世界でいちばん・・・』も『Q思考』も、その前の本も(覚えてない)文教堂に置いてあったじゃん」
「あれは『置いてあった』んじゃなくて、俺が西葛西店に出向いて、店長さんに『地元ですから~ひとつよろしくお願いします・・・』って頼んで『置いてもらってた』の!」
「あらそうだったの?アタシご近所に自慢しちゃったわよ・・・」
「ま、いいけどね・・・」

・・・てな感じで、この程度のかなり「浅~い」話をして盛り上がっていたら(毎回そうなんだけどね)、本を黙ってジーッと眺めていた次男が口を開く。

「何しろ難しそうな本だね・・・英語も難しかったんだろうね」
「お、ま、まあな、苦労したけどなあ」
「さすがだねえ・・・」

と、ここまではまあよかったんだがね。
突然吹き出しやがったのよ。

「え、何かオカシイか?」

と聞いたら、大学の数学科で、空気を読むということとトンと無縁な環境で暮らしている奴ぁニヤニヤしながらこう言い放ったね。

「でもお父さん、この前のTOEIC、900点割ったんだよね」

う・・・・・・・・ちくしょー。癒えない傷の上に塩を塗りたくるような真似しやがって~!と思ったが反論できなかった。

ふて寝してやら~。

でもいい日でした。感謝して寝よう。

おやすみなさい。
(後記)『ティール組織』出版直前の、見本本が届いた頃の我が家の会話です。僕はこの本を素晴らしい内容のものだと確信してはいましたが、一般の読者に受けるとは思っていませんでした。そこで以前の書籍とは異なり、地元の本屋さんに「売り込み」に行くことはやめた(あきらめた)のです。結局この僕の読みは大外れとなり同書は大ヒット。いつのまにか地元の書店にも平積みになっていました。懐かしい会話です(2022年1月16日記)

2017年12月10日に受けたTOEICの結果(2018年1月)

12月10日に受けたTOEICの結果がわかった(オンライン)。
Listening 460
Reading  430
合計  890
ちちちちちちちちくしょーーーーー!!!!
アマ陥落ぅーーーーー!!!
それでもプロかテメ~!!!
リーディング前日の作戦変更が裏目に出た。
Part 5&6の15分、Part 7後半30分までは作戦通りだったが、Part7前半を後ろからやってしまったのだ。どうも後で満点ホルダーのコメントを読むと、このPart6の後半がやや難しかったらしい。ここに引っかかって焦りまくり、Part6の前半の最後6個ぐらい塗り絵になってしまったのだ。
しかしこれが現実だ。
ここに恥をさらして、3月にまた頑張ります。

(後記)結局私はこの年の後半にもう一度受けてまたもや890点。その頃にTOEICの試験内容に対する疑問が出始めたこともあって、翻訳ストレッチでTOEICの勉強を極端に落とすことにしました。

tbest.hatenablog.com

出版翻訳と「採算」(2017年12月)

実務翻訳の時は頭の中の3分の1ぐらいは採算を考えている。締め切りが比較的近い(長いものでも一カ月ぐらい)こともあって時間あたりWord数(と売上高)が常に頭の中に残っている。1カ月単位で売り上げも計算します。単価交渉もする。

しかし書籍は別だ。

最初から採算を考えることはない。ていうかそんなこと考えてたら(僕の場合は)できない。

半年とか1年とかのタイムスパンの中で、空いた時間を全て突っ込むことになる(だから今もやっている。おそらく31日午前まで書籍オンリー)。採算なんて考えていたらやってられないし、ここで儲けようとは思っていない。

自分を突き動かすのは、自己表現と自己実現への欲求、社会に何かを残したいという得も言われぬ情念、そして「これを世に出すのは俺しかいない!」という意地かな。特に今回は持ちこみ企画だったのでその気持ちが強かった。

だから僕は、出版を専業にしている皆さんが、どういう風にここを考えて仕事を進めているのかに興味はあります。だって採算とか時間給とか考えてたらいい仕事にならないような気がするから。本の場合。

でもね。

終わってからは別なのね。うっふん♥
ソロバンと欲得がぬくぬくと頭をもたげてくるのである。

今回もそう。出版契約の話、最初の打ち合わせでしたはずなんだけど覚えていないのでメールして聞きましたよ。

ブレイクアウトネーションズ』の時も、『世界でいちばん~』の時も、『Q思考』の時も、出てから数カ月は「取らぬ狸の」楽しい思いをしたもんです。だから今回もそうなる、オレ様は!アマゾンの順位とかちょっと上がると喜び、落ちると大いに落胆するんです(だいたいさ~、こんなのいつもいつまでも舐めるように見続けるのは著者と訳者ぐらいなんだと思いますけども)。でもこれまでは、ぬか喜びはすべてが夢まぼろし、幻想なのであった。もちろん納得はしてるんだけど。

だから本が出てからの数カ月、ちょっとはしゃいでも、自画自賛しても、許してね。

『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』

発売まで1カ月先ですが・・・
 訳書としては15冊目(共著、名前の出ない本も含みます)が出ます。
 
『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』
フレデリック・ラルー (著), 嘉村賢州 (解説), 鈴木立哉 (翻訳)
 ・経営者、経営幹部、経営企画部社員、人事部門担当者、管理職、人事コンサルタント経営コンサルタントの皆様向けの書籍ですが、今のような時代、「自分が活き活きするような素晴らしい組織ってどういう会社?」「働くってどういう意味があるの?」を模索している個人の皆様にもよい指針となれるのではないか、と思っています。
 ・2014年に出版させていただいた『世界でいちばん大切にしたい会社』で紹介された意識の高い資本主義(コンシャス・キャピタリズム)に基づく組織論、のさらに一歩先を行く組織論です。したがって同書を面白いと思われた方には「さらに面白い」と思います。
 ・企画から出版まで2年半。本当に苦労しました。本書出版にあたっては、編集者の下田さんはもちろんのこと、解説文をお寄せいただいた嘉村賢州さんをはじめ、ABD(Active Book Dialogue)勉強会参加者の皆様、他多くの皆様に大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。
 ひとつよろしくお願いします。